(公益財団法人奥山保全トラストの設立の経緯)

かつて日本の奥地には、多種多様な生物にあふれる鬱蒼とした森が広がっていました。そして、この森から湧き出る滋養豊かな水は、あらゆる生き物の生命を育み、農業、林業、漁業、工業、全ての産業を支えてきました。

しかし、私たちの祖先が「奥山」として大切に守ってきたその森は、戦後数十年の間に、開発やスギ・ヒノキの拡大造林のためにその多くが破壊されました。このため、様々な野生動植物が絶滅の危機に瀕し、また、生物の多様性を失った日本の「奥山」は、林業不況による放置人工林の増加や地球温暖化の影響も重なり、荒廃の一途をたどっています。

また、近年では、世界的な水不足を背景に海外の資本が日本の水源地の森を取得するという事態が発生しています。

今、わずかに残る「奥山」の自然林を保全し、広範囲にわたり荒廃した森の再生に早急に取り組まなければ、近い将来、生命と文明の基盤である水源の森は失われてしまうと、私たちは危機感を募らせています。

私たちは、十数年にわたる奥山保全活動を続けるなかで、失われつつある「奥山」の豊かな森を残すためには、ナショナル・トラストにより森林を買い取り、永久に開発できないように保全・復元していくことが必要であるという結論に至り、「奥山」のナショナル・トラスト活動を全国に展開し、種の多様性の保たれた豊かな自然を守り、人が自然と共存できる社会を実現することをめざして、平成18年に「NPO法人奥山保全トラスト」を設立し、「奥山」の保全活動を続け、全国に12箇所、合計1,944haの奥山をナショナル・トラスト活動により保全するに至りました。

公益財団法人奥山保全トラストは、NPO法人奥山保全トラストが行ってきた奥山水源域の森林のナショナル・トラストによる豊かな自然の保全を継承し、さらに推進していくため、財団法人として事業を進めるために、平成27年2月に設立されました。

 

(奥山保全トラストの目的と事業)

奥山保全トラストの目的は、「多種多様な生物の生息地であり、清浄な空気と水の源である、奥地の自然林を保全するとともに、多くの人々にその価値を伝えていくことによって、種の多様性の保たれた自然生態系の保全に寄与し、もって自然と人間との共存を実現すること」(定款3条)であり、奥地の自然林=「奥山」を保全する手段としてナショナル・トラスト活動を推進していくことを使命としています。

ナショナル・トラスト運動はイギリスで始まった運動であり、歴史的名所や自然的景勝地を市民の寄付により買取り、保全・管理していくことで市民全体の財産として次世代へ継承していくことを目的としています。

水源の森は、人間だけでなくあらゆる生命の源であり、自然破壊の脅威から守るにはナショナル・トラスト運動により市民の共有財産として保全し、次世代へ継承していくべきだと私たちは考えており、目的達成のため以下のような事業を行っています。

(1)ナショナル・トラストを目的とした買収及び借り上げによる森林の保全事業

ナショナル・トラストにより生態系の保たれた豊かな森林を保全する事業です。水源地である森林、貴重な自然生態系が残っている若しくは野生動植物の貴重な生息地である森林を、市民から寄付を集めて買取りまたは借り上げることにより保全し、市民の共有財産として次世代へ継承していくことを目的としています。

 

(2)奥山の生態系、野生動植物の保全及び調査・研究に関する事業

ナショナル・トラストにより取得したトラスト地を水源地および豊かな自然生態系として保全していくための保全・管理活動及び保全に必要な調査や研究を行う事業です。

トラスト地の大部分が人工的な管理がなされていない自然林であることから、自然林部分は、原則として自然状態のまま管理し、人工林を含むものまたは生態系の保全のために特別な手入れが必要な場合は、自然生態系を破壊しない方法で手入れを行うこととしています。

 

(3)環境教育及び環境保全に携わる人材育成に関する事業

奥山の自然林の役割やその保全の重要性を伝えることにより、奥山保全に関心を持ってもらい、これに参加する人を増やしていくための事業です。

トラスト地の見学会やトラスト地内での研修などを行います。